こんにちは、日本ニュートリション協会です。
今回も最新の海外論文から、興味深いものをご紹介します。
「グルコサミン」といえば日本では「加齢に伴う関節の働きを助けるサプリメント素材」として知られています。
このたび世界的に有名な米国メイヨークリニック紀要に、グルコサミンと心不全に関する論文が掲載されました。
この論文によると、グルコサミンサプリを定期的に摂取している約48万人のデータを分析したところ、摂取していない人に比べて心不全のリスクが低下していることが確認されたそうです。
おなじみのシニア向けサプリメントに、新たな光が当たるきっかけとなりそうです。
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No.758 グルコサミンと心不全発症リスクの関連性
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<和訳論文>
グルコサミン摂取と心不全発症リスクの関連:英国バイオバンクコホート研究とメンデルランダム化分析
<抄録>
目的:
この研究は「継続的なグルコサミン摂取」と「心不全の発症」の関連性を評価すること、この関連性がさまざまな心血管疾患に影響を及ぼしているか調べることを目的としています。
被験者および研究方法:
英国バイオバンクの研究開始時に心不全を発症しておらず、グルコサミンサプリメント使用のデータが得られた479,650人を対象としました。心不全の発症に関連する遺伝的要因(2個の一塩基多型を持つ遺伝子型)について、重み付けされた遺伝的リスクスコアを算定しました。
私たちは治療に伴うばらつきを補正する統計解析手法を用いて、グルコサミンの摂取と心不全の関連性を評価しました。本研究には、2006年5月18日から2018年2月16日までのデータを使用しました。
結果:
約9年(8.3~9.8年)の追跡調査中に、心不全は5,501件確認されました。
多変量解析では、グルコサミン摂取者の心不全に対するハザード比(臨床試験における相対的な危険度:対照群を1とした場合の数値)は0.87(95% CI: 0.81- 0.94)でした。
また「男性」「好ましくないライフスタイルの参加者」の場合、逆相関がより強いことが確認されました。遺伝子リスク分類では、関連性の変化が認められませんでした。
統計解析により「定期的なグルコサミンの摂取」が心不全を抑制することが示唆されました。
また冠状動脈性心疾患および脳卒中では、それぞれ10.5%、14.4%のリスクを抑制することが明らかになりました。冠状動脈性心疾患と脳卒中の組み合わせは、グルコサミンサプリの摂取効果の22.7%に影響を及ぼしていることが示唆されました。
結論:
継続的なグルコサミンサプリメントの摂取は、遺伝子リスクの状態に関係なく、心不全のリスク低下と関連していました。さらに程度は低めですが、冠状動脈性心疾患と脳卒中がこの心不全リスク低下に関連していました。
本研究の結果は、心不全の予防と対策のための新たな戦略として周知すべきエビデンスと言うことができるでしょう。