こんにちは、日本ニュートリション協会です。
今回も最新の海外論文から、興味深いものをご紹介します。
マルチビタミンは、アメリカでも最も広く浸透しているベースサプリメントです。コロナ禍では「免疫向上」や「風邪予防」に役立つセルフケアサプリとして再評価され、売上をさらに伸ばしました。
そんなマルチビタミンですが、今回新たな可能性を示す報告がアメリカ臨床栄養学雑誌に掲載されました。米国コロンビア大学やハーバードメディカルスクールなどの研究班はアメリカで進行中のサプリメントに関する大規模研究のデータを用いて、シニア層の認知機能にマルチビタミンサプリメントが好影響を与えることを報告しています。
まさに「マルチ(多機能)」なサプリメントとして、ますます存在感を増すことになりそうです。
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No.759 マルチビタミンサプリがシニア層の認知機能に与える影響
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<和訳論文>
マルチビタミンの補給は高齢者の記憶力を改善する: 無作為臨床試験
<抄録>
シニア層にとって「認知能力の維持」は非常に重要ですが、認知機能の低下を遅らせる効果的な戦略は現在ほとんど存在しません。一方で、健康維持・増進に用いられるマルチビタミンサプリメントが、シニア層の認知にも好ましい影響を与えるかどうかは不明でした。
この研究の目的は、毎日のマルチビタミン&ミネラル補給がシニア層の記憶力に及ぼす影響を調べることです。
研究方法:
この研究はCOSMOS-Web(COcoa Supplement and Multivitamin Outcomes Study Web)の補助研究として、高齢者3,562名を対象に行われました(NCT04582617)。
参加者は無作為にマルチビタミンサプリ摂取群とダミーサプリ摂取群に分けられ、毎日決められたサプリを摂取しました。さらに、オンライン認知テストを3年間毎年実施しました。
事前に指定された評価項目は実験開始1年後に行なう「3秒ごとに表示が切り替わる20の単語を記憶する」ModReyテストでした。
さらに副次的測定として「提示された20個の図形から正しい図形を選ぶ」「その後提示された40個の図形が前の20個に含まれていたか判断する」ModBentテストや、「指定された条件に対応する色のブロックを選択する」Flankerテストがぞれぞれ3年間に渡って行われました。
その結果、マルチビタミンサプリ摂取群はダミーサプリ摂取群に比べて、メインの評価項目である1年後のModReyテストで良好な成績となり、3年間の追跡調査においても平均して良好でした。一方でマルチビタミンの補給は、副次的テストにおいては有意な影響を及ぼしませんでした。
年齢とModReyテストの成績を横断的に解析したところ、マルチビタミンの補給が加齢に伴う記憶力低下を3.1年分抑制したことになり、ダミーサプリ摂取群よりも記憶力が維持できたと私たちは考えます。